令和2年産米の栽培履歴

令和2年3月22日
田起こし
前年の11月に稲わらを全部田んぼの外に持ち出した後、耕起せずにそのままの状態で冬を越した田んぼをトラクターで起こしました。

稲刈りの後秋のうちに1回目の田起こしをするのが一般的かもしれませんが、いなほ農園ではあえて秋の田起こしはしていません。
理由は主に二つです。除草しきれなかった草の種が田んぼに落ちていますが、秋に耕起することにより、その種が土の中に入り冬越しをしやすくなるのではないかということと、化石燃料の使用をできるだけ少なくしたいという思いで、トラクターの使用回数を減らしたいということです。
そして、春から秋の間にできあがった土の状態のままで冬を越させてあげたいという、何となくそんな気がするという理由からです。

3月18日
脱芒(だつぼう)作業
稲の粒には芒(のぎ)というヒゲのようなものが付いています。
籾播きをスムーズにおこなうために、この芒を取るのが脱芒作業です。

稲粒を脱芒機に入れて、稲粒同士をすり合わせることにより芒を取ります。

4月5日、14日、26日
苗代の整地
苗箱を並べて育苗するための場所の草を取り、耕起してできるだけ水平になるように整地しました。

苗代全体をできる限り水平にし表面を平らにするために、耕起した後は水を張って作業しました。
田んぼは家から車で10分位のところですが、苗代はこまめな水の管理が必要なため家のすぐ近くにあります。

4月19日
塩水選(えんすいせん)~浸漬
昨年の秋から保管しておいた種籾(たねもみ)の選別作業です。
比重1.13の塩水の中に種籾を入れ、浮いた種籾をすくい出して沈んだ種籾のみを籾播きに使います。
約3割の種籾が浮き、その種籾は処分しました。
比重1.13というかなり濃い塩水に短時間とはいえ種籾を漬けることや、約3割もの種籾を使えないものとして処分しなければならないということが、種籾に対して申し訳ないような気持ちになります。せめて塩水ではなく真水で選別できないか、次年度は試験してみようと思います。
塩水選の後は、種籾に付いた塩水を洗い流してから真水の中に入れました。

約16㎏の種籾を3㎏位ずつ塩水の中に入れて浮いた種籾をすくい出しました。
塩水選の直後から4月28日まで水の中に浸漬しました。
水は2日毎に新しい水に変えました。水の中に薬剤等は一切加えておりません。

4月29日
籾播き~苗箱並べ
前日に水から揚げたあと日陰で乾かした種籾を苗箱に播き、苗代に並べました。

苗箱に入れる土は信濃培養土㈱の無肥料焼成土のみを使用。この土は長野県の小諸にある信濃培養土㈱の自社の山の2m以上深い所から採取した肥料分のない土です。
この土以外には有機質肥料も含め一切使用しておりません。
ローラー式の種籾を播く道具を使い、1枚1枚手で播きました。
苗箱1枚に催芽籾(さいがもみ:水に浸漬し芽が少し出始めた籾)で110g位播きました。
種籾を播いた苗箱を軽トラの荷台に載せ、種もみが完全に隠れるように覆土しました。
土の使用量は、床土として3㎏、覆土として1㎏です。
苗代に種籾を播いた苗箱を並べました。
苗箱を全部並べたあと、苗箱の高さの半分位のところまで苗代に水を入れ、苗箱の土に十分に水を含ませてから保温・保湿用のシートを掛けました。

5月20日、6月1日
荒代かき~本代かき
今年は、風さやかを栽培した4枚の田んぼの内3枚で、実験的に2回荒代かきをしてみました。
昨年水不足で荒代かきに苦労したので、周辺の田んぼで荒代かきが始まる前の水が確保しやすい時期に1回目の荒代かきをしてみようと思い、4月19日~27日におこないました。
荒代かき自体は調子よくできたのですが、5月の中旬頃になり周辺の田んぼで荒代かきが始まると、水をほとんど確保できなくなり田んぼはすっかり干上がってしまい、かえって土が固くなってしまいました。
5月20日には何とか水を確保して2回目の荒代かきをしましたが、1回練って固くなった田んぼの土を再度柔らかくするのにかなり苦労してしまいました。
本代かきは6月1日と2日に2枚ずつおこないました。
この地域では、5月25日頃には全ての田んぼで田植えが終了しているので、本代かきの時は比較的水が確保しやすくスムーズにおこなえました。

1回目の荒代かき。水が確保しやすい時期とはいえ十分な量がないため、水を入れながら少しずつ荒代かきをしました。
水が張られた田んぼには中央アルプスが映ってとてもきれいです。

6月5日、6日
田植え
一坪あたり70株、苗の本数は3~4本で植えました。
昨年は田んぼによって60株と70株で植えたのですが、株間の雑草を減らすには70株植えの方が良いように思い今年は4枚の田んぼ全て70株で植えてみました。

田植えの前日に苗代から苗箱を移動しました。
苗箱の中にあえてシートを敷いていないため、苗箱の底に沢山開いている小さな穴から苗の根が苗代の土の中に伸びています。この写真は、その根を切っているところです。
苗代に肥料は播いていませんが、根が箱から出て苗代の土の中に伸ばすことが出来た方が苗にとってはうれしいような気がして、苗箱の底の穴をシートでふさがないようにしています。
3年前はシートを敷きましたが、その時よりも苗の生育が良く苗丈も高くなっています。
7㎞ほど離れたところにある田んぼに苗を移動しました。
苗の丈は約11cmでした。
2㎝位の高さに水を張った田んぼに田植えをしました。
4枚の内3枚の田んぼは、周辺の田んぼと同じように本代かきから5日目に植えましたが、1枚の田んぼは水の都合で3日目に植えました。
5日目位でないと土が柔らかすぎて植えにくいということでしたが、3日目でも問題なく植えることができ、しかもその田んぼの方が草の生える量が少なくて除草が楽でした。
来年からは、全ての田んぼを本代かきから3日目に田植えをしようと思います。

6月15日~8月27日
除草作業
田植えから10日後に手押しの除草機で1回目の除草をしました。
その後、草の生え具合を見ながら手で除草しました。
除草にかかった時間は、風さやかの田んぼ4枚とコシヒカリの田んぼ1枚の合計3反2畝で約83時間でした。
前年は、合計2反8畝で約120時間かかっていますので3分の2位に減っていますが、この時間を更に短くしていくことがこれからの課題です。

レトロな木製の手押し除草機。なかなか使い勝手が良いです。
1回目の除草は田植え後10日目に手押し除草機でおこない2回目からは手で除草しました。
令和3年は手押し除草機での除草を田植え後もっと早い日におこない、回数も増やすようにする予定です。
7月はほぼ毎日雨、8月は連日の猛暑。手での除草は結構大変でした。

6月中旬~8月上旬
田植え後~出穂
田植え後は昨年と同じく水の確保に苦労する日々でした。
5枚の田んぼの内1枚は、田植え直後から特に水不足で干上がってしまう日も多くありました。
刈れてしまうのではないかと心配しましたが元気にに生育しました。だいぶ丈が短く分けつも少ないですが、無事収穫をすることができ稲の自然環境への適応力の強さに驚きました。
他の田んぼでは、イネミズゾウムシやドロオイムシが発生した時期がありましたが、農薬を使わず自然にいなくなり特に被害は出ませんでした。

手押し除草機で除草した翌日に2枚の田んぼでイネミズゾウムシが発生しました。
一つの株に数匹ずつおり、葉の先端の方が食害で白くなりましたが数日でいなくなり、その後発生することはなく特に被害はありませんでした。
田植えの4週間後位の様子。生長の仕方はゆっくりですが力強く育っていきました。
特に水の確保に苦労した田んぼです。全面がひび割れるほど干上がってしまった時期もありました。
田植えから2か月後の様子です。背丈は低いですがしっかり分けつしています。
8月10日に出穂しました。

10月2日
稲刈り
コンバインで稲刈りをしました。
風さやかは4枚(2反6畝)で15俵の収穫でした。

昨年よりも背丈が低く穂の量が少なかったですが、元気に生育してくれ美味しいお米が収穫できました。
前年と同じく近所の方に依託してコンバインで刈取りをしました。
外側の2周分は藁を細かく刻んで落とし、他は全部長いまま藁を落としました。
11月下旬から12月上旬ごろ、長いままの藁を集めて近くの畑に移動しました。外周部分の刻んだ藁は、冬の間に田んぼ全体に広げます。
できれば藁は全量田んぼの外に持ち出したいですが、そのための労力と持ち出した後の有効利用が充分にできない現状を考えると、藁の処理をどうすることが一番良いのかが大きな課題です。
【令和3年の予定】
令和3年は、田んぼが1枚(1反)増える予定です。
風さやか、コシヒカリの他にもう1品種増やす予定です。