令和4年産米の栽培履歴

3月26日
脱芒(だつぼう)
今年も、伊那市で有機栽培の米作りに取り組んでいる方のお宅で脱芒機をお借りして、脱芒の作業をしました。
苗箱に種籾を播きやすくするために、種籾についているヒゲのようなものを取る作業です。

今では種籾は農協などから購入する人が多いので脱芒機を持っている方が少なく、毎年とても助かっています。

3月30日
田起こし
気温がだいぶ上がってきた3月末、田起こしをしました。
昨年までと同じように秋には田起こしをせず、春のみ田起こしをしました。
稲刈が終わった後、そのままの状態で冬を越した方が稲にとっても田んぼの土にとっても何となく良いような気がするのと、トラクターを使う回数をできるだけ少なくしたいという思いで春に1回だけ起こしています。

4月21日
種籾の選別 ~ 浸漬
昨年までは塩水で選別しておりましたが、今年は真水で選別しました。
塩水(比重1.13)で選別するのが一般的なのですが、「こんな濃い塩水に種籾を入れるのは不自然ではないか」という思いを持ちながら選別作業をしておりました。
「無肥料で栽培した稲には、そもそも選別しなければならないような病気米などは無いのではないか」とも感じていました。
「無肥料無農薬で、自分の力で育った稲を信頼しよう」という思いで、今年から真水で選別することにしました。
昨年までは約30%の種籾が水面に浮き、その種籾は使わないように処分しておりましたが、今年は水面に浮いた種籾は約5%でした。
選別のあとの消毒は、今年も温湯消毒も含めおこなっていません。
沈んだ種もみはネット袋に入れて、籾播きの前日まで9日間、2日に1回水を換えながら浸漬しました。

4月24日~27日
苗代づくり
昨年まで苗代にしていた所と同じ所を苗代にしました。
苗代の隣は昨年までは畑でしたが、今年からはその畑と苗代の部分の両方を田んぼにすることにしました。
広さは合計3畝です。
トラクターで代かきをしたあと、整地板(トンボ)でできるだけ田んぼの表面を水平にし、苗箱を並べる前日に水を抜きました。

4月30日午前
苗箱への床土入れ
昨年までと同じく、無肥料焼成倍土を苗箱に3㎏ずつ入れました。
田んぼだけでなく苗箱にも肥料や農薬を一切使用していません。

4月30日午後
籾播き
昨年までは、1箱に種籾(浸漬が終わった時点の重量の種籾)を約120gずつ播いておりましたが、今年は約145gずつ播きました。
田植え時の植えもれをできるだけ少なくするためと、苗箱の中の根の量を多くして苗を田植え機に載せた時に崩れにくくするのに効果があるのではないかと考え播種量を増やしました。
今年も苗箱の底にはビニールシートなど何も敷いていません。
播いた種籾の上には無肥料焼成倍土を約1㎏被せました。

5月1日
苗箱並べ ~ シート掛け
前日に籾播きをした苗箱を苗代に移動して並べ、保温保湿用のシートを掛けました。
シート掛けが完了した後、苗代に水を入れました。

5月1日~6月3日
苗の育成
3日ほどして芽が出てきました。
水は夕方から夜の時間に、苗箱の高さの半分くらいまで入れます。
最初の内は苗箱の中に水が入ると覆土と種籾が浮いてしまうので、入れ過ぎないように注意します。
苗が3㎝位に伸びてからは浮くことはないので、苗が1㎝位水に浸かる程度まで水を入れます。
次の日の夕方には、水は無くなっているので毎日水を入れました。
毎年同じ苗代で苗作りをしていますが、年々苗の丈が長くなってきております。
今年は塩水選をしないで真水で種籾を選別しましたが、今年が今までで一番苗の勢いが良いように感じます。
苗が5㎝位になった頃には気温もだいぶ高くなってきたので、シートの中が暑くなり過ぎるのを防ぐために、5月14日にシートの両側を開けて風が通るようにしました。
そして、5月22日にはシートを剥がしました。
風さやか、ササニシキとも元気に生育しました。

5月23日、6月1日
荒代かき 、本代かき
4月30日に田起こしをした田んぼに水を入れて代かきをしました。
水が溜まるのに時間がかなりかかるので、5月20日から入水を始めました。
代かきの日には水が充分に溜まっていて代かきをしやすかったのですが、「スズメノテッポウ」という田んぼに良く生える草が田んぼ一面にしっかりと伸びてしまい、それを田んぼの中にすき込むことになってしまいました。
生の草を田んぼの土の中に沢山すき込むと、水が入ってから分解が進みガスが発生して稲に良くない影響があるということなので、来年は荒代かきの時にあまり草が多くなっていないように工夫しなければいけないと思いながら作業しました。
荒代かきがおわった後は、6月1日の本代かきまでの間、水を切らすことがないように毎日水の量を管理します。
水が溜まっていない日があると、荒代かきで泥状になった土が硬くなってしまうので、水を切らさないことには気を使いました。
本代かきでは、更に細かい泥状になり水持ちが良くなり、田んぼの表面が平らになるので田植えがしやすくなります。
水持ちを更に良くしたり草が生えるのを抑制するためには、代かきの回数を多くすると効果があるようですが、土を機械で練り過ぎるのも良くないような気もするし、トラクターの使用はできるだけ少なくしたいという思いもあり2回の代かきにしています。

荒代かきが終わってから5日ほどたった日の田んぼです。水面には中央アルプスが映っています。

6月4日
田植え
昨年までと同じように、1坪あたり60株という密度で植えました。
苗と苗の間隔は約18cmになります。
昨年までは苗箱の中に根があまり多くなかったので、苗を苗箱から出して田植え機に載せる時に崩れやすかったのですが、今年はしっかりと根が張っており苗箱から苗を出すときも全く崩れる心配がありませんでした。
苗の背丈は大きいもので15㎝位、小さいもので10㎝位とかなりばらつきがありましたが
支障なく植えることができました。
昨年までは、田植え機の爪がうまく苗を取れずに田んぼに落ちてしまう苗も多くありましたが、今年はそのようなこともありませんでした。
1箱あたりの種籾の量を昨年までより2割ほど増やしたことも良い影響があったのではないかと思います。

6月11日、21日、7月8日
田車による除草
昔ながらのレトロな手押しの除草機で除草作業をしました。
この作業は1反(300坪)位の田んぼであれば1時間半位でできます。除草機を押していくだけなのでそんなに大変な作業ではないです。
無農薬のお米作りでは除草に手間がかかるのですが、あまり手間がかかり過ぎたのでは無農薬でお米作りをする人が増えにくいと思うので、できるだけ除草に手間や費用がかからないお米作りを実現したい、という思いで除草作業をしています。
田車での除草は3回しましたが、手での除草はあえてしないようにしました。しかし8月、9月になると背が高くなる草が伸びてきましたので、気がついた時に手でとるようにしました。
3回の田車による除草で条間はほとんど草を抑えることができたのですが、株間は田車が通らないので除草ができず、コナギという草が田んぼ全面に増えてしまいました。
コナギが特に多かったところの稲は、茎の本数が少なく稲粒の実りも少なくなってしまいました。
来年は、株間の除草を何とか工夫したいと思います。

株間にコナギが残っています。コナギは出始めの頃はこのように細い葉ですが、段々に丸く面積の大きな葉に変化していきます。そして秋には紫色の小さな花が咲きます。背丈は高くならないのですが密集したところは稲の生育が悪くなってしまいます。

7月~9月
小さかった稲も少しずつ大きく生育していきました。
田植えから10日後位には、今年もイネミズゾウムシやドロオイムシが発生しましたが、農薬を使わなくても数日したらいなくなってしまいました。
8月上旬には穂が出始めました。
一般的には、中干しといって7月に田んぼの水を切って土を乾かすことをするのですが、中干しはしないようにしています。
中干しをすることがより良い実りのためには必要ということですが、そのようには思えないことと、中干しをすることによっておたまじゃくしなどの生き物が死んでしまうことになるので、それは自然ではないなと感じるからです。
9月になると稲は段々黄色っぽくなってきます。

8月6日の様子です。株間のコナギが大きく生育しています。これ位の量のコナギがあると稲の茎数は少なくなってしまいます。
9月13日の様子です。周辺の田んぼでは9月中旬から下旬に稲刈りがおこなわれますが、できるだけ遅く稲刈りをするようにしています。

10月20日
稲刈り(1回目)
周辺の田んぼより3週間から1ヶ月位遅い時期の稲刈りです。
稲刈が遅くなると、胴割れ米が発生したり倒伏してしまうと良く言われますが、無肥料無農薬で稲が自分の力で生育していればそんなことはきっとないはずだと思います。
それに稲が枯れるまでは稲粒の登熟はすすんでいきより美味しくなっていくと思います。
昨年まではコンバインを持っている人に委託したり、コンバインをレンタルして稲刈りをしていましたが、今年からは中古で購入したバインダーとハーベスターで稲刈りと脱穀をしました。

11月11日
稲刈り(2回目)
「はざ掛けをしない天日干し米」へのチャレンジとしての稲刈りです。
刈り取った稲の乾燥方法は、専用の乾燥機で乾燥するか、はざ掛けにして天日で干すかのどちらかですが、ほとんどは機械乾燥で、はざ掛けはごく少ないです。
乾燥機の性能も向上しており、天日で乾燥したお米に食味が劣るということはほとんどないようですが、天日で乾燥したお米には食味以外にも何か勝る点があるような気がします。
しかし、はざ掛けの作業はかなり重労働でもあり、干すための資材も必要になり、何よりも天気に影響されるという苦労があります。
そこで、誰でも気軽にできる天日乾燥の方法はないだろうかと考えた結果、適度な水分量になるまで稲刈りをしないでおこうと考えました。
無肥料無農薬で自分の力で育った稲は、枯れ始めるまでは登熟をすすめ、胴割れしたり倒伏するようなことはないはずだと稲を信じて、この日まで稲刈りをするのを伸ばしてきました。
11月に入ると、黄金色だった稲はだんだん刈れたような色に変わってきました。
そして11月7日頃には田んぼ全面がすっかり枯れ色に変わりました。
倒伏した稲は1株もありませんでした。
稲粒の水分量は 14.2% ちょうど適量に乾燥しておりました。
来年以降も、この「はざ掛けをしない天日干し米」には取り組んでいきたいと思います。

10月28日の様子です。全体的にまだ黄金色ですが、11月に入ると段々枯れた色に変わっていきました。
11月11日、稲刈り当日の様子です。全面すっかり枯れ色になっていますが稲はまっすぐに立っています。
刈り取って即脱穀をしました。稲わらは、畑の資材に使いたいという方に持って行って頂いたりして、田んぼにはすき込まないようにしています。
今年も家族でお米作りができたことに感謝です。
更に遅くに稲刈りをしたらどうなるか、という実験のために少し刈らずに残しておきました。
この稲は12月4日に刈り取りました。倒れている稲や胴割れ米はありませんでした。
水分量は11月11日に稲刈りをした稲とほとんど変わりませんでした。
12月下旬の様子です。今年も秋の田起こしはせずにこのままの状態で冬を越します。